最近の機械貿易動向(3 月)~機械輸出伸び率 5 ヶ月連続マイナス~

2019/05/1614:54配信

日本機械輸出組合 2019.5.16

2019 年 3 月の機械輸出額は 4 兆 6,967 億円、対前年同月比 3.0%減と、5 ヶ月連続でマイナスとなった。これは、① EU、北米向け以外の 4 地域でマイナスだったこと、② 船舶、航空機部品をはじめ 4 輸出業種のみがプラスとなったことなどによる。為替・営業日要因が 2.9%の減少寄与要因だったことを考慮すると、実質的な伸び率は 0.1%減となった。2019 年 4 月の為替・営業日要因は 2.0%の増加寄与要因となっているが、5 月 13 日発表の貿易統計速報によれば 4 月上中旬の全商品輸出は 0.8%減であった。



Ⅰ 要 約

1. 全商品貿易動向(図表1)
① 全商品輸出額:7 兆 2,020 億円(前年同月比 [以下同じ] 2.4%減、4 ヶ月連続マイナス)
② 全商品輸入額:6 兆 6,742 億円(1.2%増、3 ヶ月ぶりプラス)
③ 貿易収支:5,278 億円の黒字

2. 機械貿易動向
(1) 機械輸出入動向(図表2)
① 機械輸出額:4 兆 6,967 億円(3.0%減、5 ヶ月連続マイナス)
為替・営業日要因を除いた実質的伸び率:0.1%減 (5 ヶ月連続マイナス)
② 機械輸入額:2 兆 1,142 億円(1.2%増、4 ヶ月ぶりプラス)
(2) 為替・営業日動向
2019 年 3 月に 2.9%の減少要因、4 月に 2.0%の増加要因、5 月に9.8%の減少要因となる。
(3) 地域別動向
① EU、北米向けがプラス、それ以外の 4 地域向けがマイナス(図表4、5)
② 北米向け:2.8%増、再びプラス(図表4、5)
③ 中国向け:10.2%減、再びマイナス(図表4、5)
④ ASEAN・南アジア向け:4.2%減、3 ヶ月連続マイナス(図表4、5、6、8、9)
⑤ EU 向け:3.5%増、3 ヶ月ぶりプラス(図表4、5)
⑥ 韓国・台湾向け:2.8%減、14 ヶ月連続マイナス(図表4、5、6、7)
⑦ その他地域向:5.1%減、4 ヶ月連続マイナス(図表4、5、10)
(4) 業種別動向(図表11)
上位 21 業種中 4 業種がプラス。そのうち船舶、航空機部品の 2 業種が二桁の伸び
(5) 機種別動向(図表12、13)
① 船舶(その他地域、ASEAN・南アジア向け中心)、発電機(中国、北米、ASEAN・南アジア、その他地域向け中心)等が大きくプラス
② TV(北米、EU 向け中心、6 ヶ月連続上位)等も好調に輸出が継続
③ 鉄道車両、通信機械部分品等が大きくマイナス
(6) 機械輸入動向(図表14)
① 機械輸入額上位 12 機種のうち、10 機種がプラス
② そのうち 6 機種が二桁以上のプラス



Ⅱ トピックス

1.【中国】工作機械の中国向け受注額が下げ止まり。日系メーカーの現地生産が加速
 2019年3月の日本からの中国向け工作機械受注額は前年同月比44.0%減の201億円で、13カ月連続のマイナスとなった。下げ幅は2月の50.4%減から縮小しており、受注額も8カ月ぶりに200億円台を回復した(全体の輸出額は、28.5%減の767億円だった)。
 ここにきて、公共投資や増値税の減税などの景気対策で中国経済の減速に歯止めがかかりつつある。
 2019年第1四半期(1~3月)の GDP は前年同期比6.4%増で、前四半期から横ばいとなった。3月の工業生産も前年同月比8.5%増と大幅増となっている。4月に入っても各指標は好転している。4月の輸入は同4%増となり、内需が持ち直している可能性がある(輸出は前年同月比3%減)。同じく4月の製造業 PMI 指数は50.1で、拡大・縮小の目安となる50を2カ月連続で上回った(3月は50.5)。ただし、最大のリスク要因は米中貿易紛争だ。5月に入り米国は関税を引き上げ、中国も報復措置を発表した。
米中政府は交渉は継続するものの、回復しつつある中国経済への悪影響が懸念される。
2. 【台湾】米中貿易摩擦を受け経済成長が鈍化。中国からの生産移管を行う企業が続出
 台湾の 2019 年第 1 四半期(1~3 月期)の経済成長率は大幅に減速し前年同期比 1.72%だった。11 四半期ぶりの低水準となった。米中貿易紛争による IT 関連輸出の低迷が響いた。台湾政府は 2019 年の成長率を 2.27%と見込むが、楽観的すぎるとの指摘もある。4 月に入っても、輸出額は 3.3%減の 258 億 3,000 万ドルと 6 カ月連続のマイナスとなった(半導体などの電子部品は 5%減と落ち込んでいる)。
 台湾では 2020 年 1 月に次期総統選が行われる。与党・民進党は、蔡英文政権の経済政策への不満から苦戦が予想される。またホンハイの郭台銘董事長が野党・国民党からの総統選出馬を表明し、注目を集めた米中貿易紛争の激化を受けて、台湾の IT 機器メーカーが中国から生産拠点を移転する動きが加速している。台湾政府が域内投資を誘導する政策をとっているため、メーカーの台湾回帰が進んでいる。ホンハイはサーバー関連の生産拠点を高雄に新設する。コンパルはルーターや PC 生産の一部を桃園に移した。電源装置大手・台達電子工業は、台湾での増産に向け 132 億台湾ドルを投資する。ペガトロンはインドネシア・バタンでの通信機器の生産を強化する。現在のところ台湾企業の生産移転は通信機器など一部にとどまるが、貿易紛争が長引けば本格的にサプライチェーンを見直す動きにつながる可能性もある。

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最終更新:2019/11/2018:09

日本機械輸出組合

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