2025年度 産業機械の受注見通し
2025年3月28日公表
一般社団法人日本産業機械工業会
わが国経済は2024年の実質GDPが+0.1%(2次速報値)と小幅な伸びにとどまるなど、停滞傾向にある。なお、先行きについては、世界銀行が2025年1月に発表した世界経済見通しによると、日本の2025年GDP成長率は+1.2%、世界全体は+2.7%と見込まれている。
しかしながら、グローバル経済においては、地政学リスクの高まりや金融引き締めの影響で投資決定が慎重になっている。特に中東情勢の不安定化や米国の関税政策の不透明さ、中国経済の減速がグローバル市場に影響を与えている。
そうした情勢のもと、2024年度と2025年度の産業機械(当工業会取扱い)の受注見通しを以下の通り策定した。
2024年度
【内 需】
民需については、食品工業、石油精製、窯業土石、自動車、造船、運輸業、卸売・小売、ガス業に増加がみられるものの、化学工業、鉄鋼業、電気機械、電力業が減少しており、特に電力業向けで前年度に受注した火力発電の大型設備の反動減が大きく影響し、前年度を下回るものと見込んだ。
官公需は、ポンプ等の防災・減災関連は増加しているものの、都市ごみ処理装置は発注量が減少していることから、前年度を下回るものと見込んだ。
内需全体としては、前年度比5.1%減の3兆7,477億円と見込んだ。
【外 需】
アジア、ヨーロッパが減少しているものの、中東、北アメリカがけん引役となり、外需全体としては、前年度比18.2%増の1兆9,323憶円と見込んだ。
このうち、アジアについては、中国を除くアジアが前年度比プラスを見込んでいるものの、中国がマイナス要因となっている。
中国については、ボイラ・原動機や化学機械、プラスチック加工機械、運搬機械、製鉄機械、半導体関連設備等の需要が落ち込んでいる。中国除くアジアは、化学機械、風水力機械、運搬機械、半導体製造関連が増加している。
ヨーロッパは、ボイラ・原動機、風水力機械、製鉄機械、半導体関連設備が減少している。
中東は、ボイラ・原動機、化学機械、風水力機械が増加し、特にLNG大型設備を複数受注した化学機械が大きく増加している。
北アメリカは、ボイラ・原動機、化学機械、プラスチック加工機械が増加し、特に大型の発電設備を複数受注したボイラ・原動機が大きく増加している。
【合 計】
2024年度の合計は、前年度比1.8%増の5兆6,800億円と見込んだ。
2025年度
【内 需】
国内では、老朽化設備の更新の他、GX推進政策に基づく投資の増加、再生可能エネルギー関連設備、AI・IoT技術の活用に加えて、省人化・自動化を支援する各種施策の継続も市場の追い風となると見込んでいる。更に、半導体・蓄電池素材の国内生産強化や防災・減災等の国土強靭化事業の推進により、設備投資が活発化すると予測される。
一方、マイナス要因としては、建設業界の人手不足や物流費の上昇が、設備投資計画の遅延・中止を招く可能性がある。加えて、エネルギー基本計画に基づく火力発電の減少、原材料・エネルギーの価格高騰、企業の投資判断の慎重化等が新規案件の減少につながる懸念がある。
この結果、内需全体では、前年度比4.9%増の3兆9,328億円※1と見込んだ。
【外 需】
世界的なカーボンニュートラルの動向やエネルギー供給の安定化を目的とした投資が継続しており、LNGや水素、アンモニアといった低炭素・脱炭素エネルギー関連の案件は引き続き注目される。また、インドや東南アジアの経済成長に伴う設備投資の増加、欧州や米国における再生可能エネルギー分野のプロジェクト拡大等も、今後の成長要因として期待される。特に中東でのLNG案件、東南アジアでの半導体・データセンター向け電力需要の増加が見込まれる。更に、水インフラや廃棄物処理需要がアジアや中東地域で増加すると見込んでいる。
その他、世界的なEV関連投資の不透明感はあるものの、半導体産業や石油化学分野の成長が見込まれる。
この結果、外需全体では、前年度比8.3%増の2兆929億円※2と見込んだ。
【合 計】
2025年度の合計は、前年度比6.1%増の6兆258億円※3と見込んだ。
※1 2025年度の内需の金額(3兆9,328億円)は、2年ぶりに増加へ転じ、20 23年度の受注金額(3兆9,476憶円)の水準まで回復。
※2 2025年度の外需の金額(2兆929億円)は、2014年度(2兆5,804億 円)以来、11年ぶりの2兆円台。
※3 2025年度の合計の金額(6兆258億円)は、2014年度(6兆751億円) 以来、11年ぶりの6兆円台。

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最終更新:2025/03/2816:37