三菱ふそう 今日と明日のふそう車を形づくる 「デザイン・エッセンシャルズ」を開催
フィジカルデザイン
MFTBCにおけるフィジカルデザインプロセスは、クレイ(工業用粘土)模型(以下、クレイモデル)における日本人モデラーの伝統的な職人技術のほか、最新のデータモデリングによる3Dプリントや数値制御データ切削(以下、NC切削)などの技術との融合を進めています。デザイナーからスケッチや指示図を受け取り、モデラーは紙上(2次元)のアイデアを実際のモデルに具現化する作業を開始します。クレイモデル作業においては、デザイナーとモデラー、さらにエンジニアとの間の試行錯誤と積極的なコミュニケーションに基づいており、両者が理想の形を共有できるまで何度も繰り返します。クレイモデル作業は、生産設計検討、ユーザーニーズや機能性の考慮など、さまざまな調整を経るため、一度では完結しません。さらにデザイナーは、この手作業での形状確認を終えた後、生産開始可能な品質を確保するために最新技術を活用し、より一層細かい調整を施します。完成したモデルは3Dスキャナーでデジタル化され、CAD(コンピューター支援設計ソフト)によって、手作業の情感を残しつつ、精度の高いデータにしていきます。また、ふそうブランドを象徴するグリルやスリーダイヤロゴなど、より複雑で高いデザイン精度が求められる場合は、3DプリントとNC切削を活用します。
モデリング工程の大部分を時間を惜しまずに人間の手で行うことにより、高品質なモノづくりだけでなく、ふそう車両の個性の表現を追求しています。ふそう車両はクリーンで流動的な車両外観によりひと目で見分けがつきます。これらの特徴は、モデラーやデザイナーの研ぎすまされた感覚と試行錯誤を経て生まれるものです。街並みの風景に溶け込むバランスのとれたプロポーションや、 親しみやすく、自然な上品さが漂うデザインは、言語化が難しい「FUSOらしさ」をクレイモデラーが追求した結果です。
この理想の形への探求を支えるのは、知識と経験の積み重ねです。川崎のデザインセンターには、 30年に及ぶこの分野でのキャリアで培った技術を持つクレイモデラーが在籍しています。数十年のキャリアを持つエキスパートは、ふそう車両の歴史や「FUSOらしさ」を暗黙知として内面化しており、この長年のノウハウは現在の製品ラインアップのデザインにも受け継がれています。クレイモデラーの作業は簡単に伝えられるものではなく、才能だけがモノを言う作業でもないため、エキスパートの知識と経験は、ふそう車両独特の個性や品質を守るうえで重要な役割を担っています。
MFTBCのクレイモデラーはまた、フィジカルデザインプロセスのさまざまな側面に精通しています。 各モデラーは、クレイを形作る以外、金属加工や車両塗装などの技能も持ち合わせており、それらがクレイ制作にも反映されます。一例として、クレイモデラーは金属加工技術を活かして、クレイモデル制作に用いる道具を自ら製作します。また、クレイモデル制作だけでなく、ハードモデリングやデータ作成など、フィジカルデザインの他の工程を担当することもあります。このように、クレイモデラーが持つ専門性の高さと深さは、製造分野での効率の追求とは対照的に、真の「匠」としての独自性を支えています。
MFTBCのフィジカルデザインは、デザインの細部へのこだわりと、ブランドの本質を表現すること で、デジタルのみのプロセスとは一線を画しています。ふそう製品のデザインは単純に美しさだけを求めるものではなく、お客様へ届ける価値を最大化する、という理念を反映しています。乗用車に比べて、積載量、寸法など販売につながる厳しい規格が製品に適用される商用車では、デザイナーやモデラーの能力が発揮できる範囲は限られていますが、その限られた条件のなかでの差別化が、最終的に大きな違いを生み出します。クレイモデラーの一つひとつの判断には、彼らが手掛けるトラックやバスのあらゆる側面を最適化し、品質を高めるコミットメントが表れています。
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最終更新:2021/04/1416:01