最近の機械貿易動向(10 月)~機械輸出額 12 ヶ月連続減少~
日本機械輸出組合 2019.12.19
2019 年 10 月の機械輸出額は 4 兆 2,219 億円、対前年同月比 9.4%減と、12 ヶ月連続で前年同月比減少した。これは、① 6 地域向けすべてで前年同月比減少したこと、② 21 業種中 19 業種が減少したことな どによる。為替・営業日要因が 7.3%の減少寄与要因だったことを考慮すると、実質的な伸び率は 2.3%減となった。2019 年 11 月の為替・営業日要因は 6.9%の減少寄与要因となっているが、12 月 18 日発表の貿易統計速報による簡易計算では、11 月の機械輸出は 9.0%減であった。
Ⅰ 要約
1. 全商品貿易動向(図表1)
① 全商品輸出額:6 兆 5,771 億円(前年同月比 [以下同じ] 9.2%減、11 ヶ月連続減少)
② 全商品輸入額:6 兆 5,614 億円(14.8%減、6 ヶ月連続減少)
③ 貿易収支:157 億円の黒字
2. 機械貿易動向
(1) 機械輸出入動向(図表2)
① 機械輸出額:4 兆 2,219 億円(9.4%減、12 ヶ月連続減少) 為替・営業日要因を除いた実質的伸び率:2.3%減 (2 ヶ月連続減少)
② 機械輸入額:2 兆 1,866 億円(11.2%減、2 ヶ月ぶり減少)
(2) 為替・営業日動向
2019 年 10 月に 7.3%の減少要因、11 月に 6.9%の減少要因、12 月に 3.2%の増加要因となる。
(3) 地域別動向
① 6 地域向けすべてで前年同月比減少(図表4、5)
② 北米向け:11.7%減、3 ヶ月連続減少(図表4、5)
③ 中国向け:12.1%減、8 ヶ月連続減少(図表4、5)
④ ASEAN・南アジア向け:12.6%減、10 ヶ月連続減少(図表4、5、6、8、9)
⑤ EU 向け:8.5%減、3 ヶ月連続減少(図表4、5)
⑥ 韓国・台湾向け:2.9%減、21 ヶ月連続減少(図表4、5、6、7)
⑦ その他地域向: 3.4%減、2 ヶ月ぶり減少(図表4、5、10)
(4) 業種別動向(図表11) 上位 21 業種中 2 業種が増加。そのうち船舶が二桁の伸び
(5) 機種別動向(図表12、13)
① 船舶(その他地域、特にパナマ、リベリア向け中心)が大きく増加
② 鉄道車両、携帯電話、通信機械部分品等が大きく減少
(6) 機械輸入動向(図表14)
① 機械輸入額上位 12 機種のうち、6 機種が増加
② そのうち時計が二桁の増加
Ⅱ トピックス
1.【中国】経済の減速が続く。日本企業にも大きな影響
中国経済の減速が続いている。2019 年第 3 四半期(7-9 月期)の経済成長率は、前年同期比 6.0%増 だった。2 期連続の減速となった。米中の貿易摩擦や個人消費の減速が要因となった(10 月の自動車販売は前年比 4%減と、16 カ月連続の減少となった)。10 月の輸出は前年同月比 1%減の 2,129 億ドル、 輸入は同 6%減の 1,701 億ドルと貿易も低迷を続けている(同月の対米輸出は前年同月比 16%減、輸入は同 14%減と大きく落ち込んだ)。1~10 月の固定資産投資は、過去最低の前年同期比 5.2%増となった。その他の指標も、経済の減速が続いていることを示している。10月の工業生産は前年同月比 4.7% 増にとどまった。製造業購買担当者景気指数(PMI)も基準値である 50 を 6カ月連続で下回り、デフレリス クさえ指摘されている。中国政府が年初に打ち出した 2 兆元規模の景気対策の効果は表れておらず、 2020 年の経済成長は 5%台に落ち込むとの予測もある。
中国企業の設備投資の落ち込みから、日系工作機械メーカーの業績見通しの引き下げが相次いでいる。 10 月に入り、ファナックは今期 2 度目の下方修正を発表した。ブラザーも工作機械の受注減から、今期の純利益を 17%減に引き下げた。オークマは、連結純利益が前期比 41%減となる見通しを発表した。
インフラ投資の低迷は建機メーカーにとっても逆風となる。住友重機械工業は今期の利益見通しを引き下げ、19%減になるとした。日立建機の第 3 四半期における中国市場の売上高は、前年比 33%減と落ち込んだ。
2.【韓国】SK ハイニックスの業績が悪化。半導体市況は底を打ったとの見方も
韓国の半導体大手・SKハイニックスの2019年第3四半期(7-9月期)の営業利益は、前年同期比93% 減の 4,730 億ウォンと過去 3 年で最低に落ち込んだ。売上高は前年同期比 40%減の 6 兆 8,390 億ウォンだった。売上高の 7 割超を占める DRAM の価格下落が響いた(同社は、世界市場で約 3 割のシェアを 占める)。業績不振を受けて、来年度の投資額を減少させる計画である。
ただ、5G 市場の拡大は半導体メーカーにとっては明るい材料となっており、投資を再開する企業も出てきた。台湾の TSMC は、2019 年と 2020 年に例年の 4 割増となる過去最高水準の設備投資を行う。また、サムスン電子も同四半期は 56%の減益だったが、中国と韓国での投資に乗り出した。一方、米マイク ロンは業績の不調が続いており、来季の投資額を 3 割減少させる。
中国企業の動向も注目される。中国の紫光集団は、重慶市に DRAM 工場を設立する(同社は NAND 生産も開始する)。2019 年末に工場建設に着工し、2021 年に竣工する予定。中国企業が低価格を武器にDRAM市場に本格参入すれば、業界構造に大きな影響を与えることになる。
半導体市況の下げ止まりの兆しから、日本の半導体製造装置メーカーの業績も改善に向かっている。 東京エレクトロンは 5G 関連需要の好調から、2020 年 3 月期の純利益を 32%減に上方修正した。メモリーテスター大手のアドバンテストは5G関連の検査装置の需要が伸びており、業績見通しを105億円上方修正した。
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最終更新:2019/12/2013:03