【動画付き】新工法で世界をリード!大林組が3Dプリンターで曲面ベンチを建設

2019/08/3011:49配信

実物の建物を造る3Dプリンターの開発・実用化は、海外が先行しています。

3Dプリンターで造った建物や構造物の弱点は、鉄筋が入れにくいことです。地震国、日本で3Dプリンターによる建設を普及させるためには、部材の引っ張り強度をいかに出すかということが常に問われます。

大林組はこのほど、世界をリードすると言っても過言ではない国産3Dプリンターの開発に成功しました。

3Dプリンター

大林組が開発した新型の3Dプリンター。長さ約3mのロボットアームを搭載している(写真:大林組)




 

引っ張り強度を出すために、3Dプリンターで造形した部分を“打ち込み型枠”として使用し、その中に

ナ、ナ、ナ、ナント、


スリムクリート


という特殊なモルタル材料を充てん、複合構造を開発したのです。

3Dプリンター

造形中の3Dプリンター。外枠と内枠をまず造形する(以下の写真:特記以外は家入龍太)


3Dプリンター

部材の断面図。オレンジ色の実線が3Dプリンターで造る内枠と外枠。斜線部がスリムクリートで充てんされたところ(資料:大林組)


スリムクリート

外枠と内枠の間に充てんされた「スリムクリート」。枠の部分は幅30mm、層厚10mmで造形されている

スリムクリートとは、大林組が開発した常温硬化型のモルタル材料です。長さ12mmの高強度鋼繊維が入っているため、圧縮強度180N/mm2に対して、引っ張り強度も8.8N/mm2も持っています。

東京都清瀬市にある大林組技術研究所の建物内には、スリムクリートで造った橋が2本かかっています。鉄筋を使わずに、300mmと薄い桁高の橋が実現しています。

大林組技術研究所内にかかるスリムクリートで造ったスリムな橋

大林組技術研究所内にかかるスリムクリートで造ったスリムな橋(写真:大林組)



一方、3Dプリンターで造形した“打ち込み型枠”部分は、デンカが開発した3Dプリンター用特殊モルタルで、圧送中は流動性を持ち、ノズルから出た後は形が崩れない性質を持っています。こちらは圧縮強度はありますが、引っ張り強度はありません。

大林組は、この3Dプリンターを使って幅7m、奥行き5m、高さ2.5mのシェル型ベンチを製作中です。3Dプリンターで造った構造物としては、日本最大級となるもので、12ピースに分けて部材を製作し、技術研究所内に設置していきます。

設計には大林組の意匠設計者や構造設計者がかかわり、曲面を利用したスマートなデザインになっています。

シェル型ベンチの完成イメージ(資料:大林組)



施工中のベンチ。取材当日は3つのピースが設置されていた



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最終更新:2019/11/2018:09

株式会社イエイリ・ラボ