穴ぼこ直前予知や一般車活用も!ニチレキ、リコーがAIによる道路管理を提供
舗装道路の維持修繕にかかわる予算が大幅に減少する一方、地方公共団体が管理する道路は膨大なため、もはやすべてをオーバーレイ(既設舗装上にアスファルト混合物の層を重ねる工法)などの修繕工事で対応することが難しくなっています。
舗装面の一部がはがれて、「ポットホール」のような穴ぼこができたら、後で補修するという事後対策に頼らざるを得なくなりつつあるのです。
こうした現状を踏まえて、ニチレキはNTT東日本、NTTコムウェアと共同で、AI(人工知能)による「局部損傷」診断技術を開発し、2019年度中にサービス提供を目指しています。
舗装道路の点検時に撮影した路面の写真画像をAIが解析することで、
ナ、ナ、ナ、ナント、
穴ぼこ発生直前
の「緊急性の高い要修繕箇所」を自動的に発見することができるのです。(ニチレキのプレスリリースはこちら)
AIによって抽出された「局部損傷」のイメージ。ポットホールが発生する前に修繕を行える(資料:ニチレキ)
従来の道路診断AIは、路面の50cm角メッシュに含まれるひび割れの本数をカウントして「ひび割れ率」を求めるものがほとんどでした。しかし、穴ぼこが発生しそうな箇所を見つけるという目的には適していません。
そこでNTTコムウェアの画像認識AI「Deeptector」を使って、メッシュ内に含まれるひび割れの交点(結節点)の個数を数え、ランク分け評価する方法を採用しました。
ひび割れの交点である「結節点」の個数から局部損傷を見つけることができる(資料:ニチレキ)
穴ぼこが発生して補修する方法だと、路面はますます傷んでしまい、補修費用も急上昇しそうです。また、自転車やバイクなどは穴ぼこによって転倒するなどの危険もありますね。
このシステムによって、穴ぼこ発生前に路面補修ができれば、修理コストも安く、通行の危険もありません。
ニチレキでは、局部損傷向けに開発した「常温表面処理工法」を積極活用することで、補修工事の低コスト化も追求しています。
従来の加熱アスファルト混合物を使った補修(左)に比べて、常温のアスファルト乳剤を使った補修(右)は長持ちし、CO2の発生量が少なく、コストダウンできる(資料:ニチレキ)
このほか、リコーは複数台のステレオカメラを搭載した車両を使って、道路の「ひび割れ率」、「わだち掘れ量」、「平たん性」を自動算出する「リコー 路面モニタリングサービス」を昨日(2019年8月1日)、提供開始しました。
一般車両をベース
にしているため、計測装置の製作や維持管理の費用が安く、測定結果の算出や報告書の作成も自動化できるので、点検コストを大幅にコストダウンすることができます。(リコーのプレスリリースはこちら)
路面性状モニタリングシステムを搭載した一般車両(写真:リコー)
50cm角のメッシュごとに、AIがひび割れの本数を自動カウントして分類する(資料:リコー)
また、取得した「ひび割れ率」、「わだち掘れ量」、「平たん性」から維持修繕の判断指標である「MCI(Maintenance Control Index)値」を算出し、地図上にマッピングすることで道路の劣化状態を見える化することもできます。
地図上にマッピングされたMCI値。舗装の劣化状態が一目でわかる(資料:リコー)
アスファルト舗装やコンクリートなどの表面にできたひび割れの発見や処理は、もはや人間よりもAIの方が得意になったと言えそうです。
調査はAIに任せて、人間はそのデータやドライバー・地域住民の声などをもとに、道路の補修計画を練るという本質的な業務に集中するというのが、予算減、人手不足時代の道路管理のスタンダードになりそうです。
最終更新:2019/11/2018:08