アンカーを全数3D化!Excelの施工データで作る熊谷組の「のり面CIM」
国土交通省が推進する「i-Construction」の情報面を支えるCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)は幅広く使われるようになり、日本建設業連合会がまとめた「2018施工CIM事例集」でも様々な実例が紹介されています。
しかし、トンネルや道路、橋梁、河川など、様々や分野の中で、ぽっかり抜け落ちているのが、斜面の崩壊を防ぐ「のり面」工事です。
その理由は、斜面を補強するためのグラウンドアンカー工や鉄筋挿入工の数が膨大であるため3Dモデル化しにくいからです。
さらに、アンカーなどの長さや地盤面を支える受圧板の大きさなどの仕様が、現地の地盤条件によって変わるため、施工段階にならないと正確な値がわからないという理由もあります。
そこで熊谷組は、こうした難題にチャレンジし、
ナ、ナ、ナ、ナント、
「のり面CIM」を開発
することに成功したのです。(熊谷組のプレスリリースはこちら)
のり面CIMのシステム画面(以下の資料:熊谷組)
のり枠型、板型の両方に対応できる
このシステムは、斜面内に打ち込むグラウンドアンカー工や鉄筋挿入工などを3Dモデル化し、その設置場所やアンカーの諸元、当該箇所の地質情報、施工日、試験結果などをCIMモデルの属性情報として持たせるものです。
さらに各アンカーには、施工時の写真や試験結果のデータシートなどもリンクさせて、元データの直接ファイルを開いて見られるようになっています。
アンカー本体本体とともに、地盤面を押さえつける受圧板も3次元化できるので、見た目もリアルになっています。受圧板の形状は、のり枠形と板形の両方に対応しています。
アンカーのCIMモデルに内蔵した属性情報
受圧板の種類や大きさなどを表示する画面
これらの施工情報を一つ一つ、CIMソフトの画面を開いて入力していくのは大変な作業です。
そこで、このシステムでは、施工実績を整理した
Excelデータを読み取り
自動的に3Dモデル上に配置できるようにしているのです。
アンカーの施工実績データを整理したExcelデータ。これを読み取ってCIMモデル化する
システムは、3次元地質解析ソフトをベースに開発されたので、調査ボーリングをCIMモデルに追加したり、地質構造の3D解析したりといった柔軟な使い方も可能です。
このシステムは、熊本県内で施工された阿蘇大橋地区斜面対策工事で行われた密着型安定ネット工(鉄筋挿入式アンカー工併用)に導入されました。
施工中に土砂層の厚さを調査し、土砂と支持基盤となる岩の境界を自動的に3Dモデル化。アンカーの種類や長さ、配置、強度をCIMモデル上で一元管理して次ブロックの施工段階にフィードバックすることで、施工の効率化を実現しました。
阿蘇大橋地区斜面対策工事で使われた「のり面CIM」の事例
阿蘇大橋地区斜面対策工事における「のり面実施概念図」
熊谷組では今後、このシステムを全国の斜面対策工に適用していく方針です。
この「のり面CIM」の成功は、現場条件によって仕様を変えていくことが多い薬液注入工事や地盤改良工事、トンネルのフォアパイリングなどのCIM導入にも、大きな参考となりそうですね。
最終更新:2019/11/2018:08